ぱちモルガンの詐欺師たちのなかで私たちがとくに興味を覚えるのは、モルガントラスト・ジャパン前代表取締役で実質的経営者の立崎泰(たちざきとおる)という人物だ。取材を進めた結果、立崎のとんでもない素顔が浮かび上がってきた。
立崎泰は希代の詐欺師として裏の世界では有名だった。公家の末裔と名乗り、数々の国宝級という美術品を所蔵しているうえ、ふだんから金色のベンツを乗り回しているという。途方もなく怪しい人物だが、儲け話を持ち込んで優良企業を事実上乗っ取り、横領を繰り返したうえで企業を再起不能にして逃げるという詐欺の腕前は一流とおそれられている。
立崎が乗っ取った企業は数多いが、ごく最近餌食になったのがインターネット映像配信で知られるアクティビジョン(小野寺隆社長)だ。立崎はNHKに太いパイプがあると称してアクティビジョンの「会長」に納まり、文部科学省の外郭団体とNHK関連会社が共同で手がける教育番組の衛星・ネット配信事業を進めた。その過程で経理担当者を追い出して腹心を後任に据え、莫大な金額の横領を繰り返したのだ。立崎が入り込んでからの使途不明金の額は一年九か月で四億円にのぼるという。
筆者が入手した内部資料からは、半年たらずの期間に計約五〇〇〇万円の架空請求書が作られ、金は立崎らの個人口座や立崎の経営する会社に送金されていたことがうかがえる。こうした多額の横領も、経理担当者の松本静江が立崎の腹心(愛人という説もある)だったため、長く発覚することがなかった。会計監査に必要な残高証明書もすべて偽造されていた。
二〇〇三年六月、小野寺が不正に気付いたときには、メインバンクの口座にはわずか一七〇〇円ほどしか残っていなかった。株式公開寸前まで行ったかつての優良企業とは思えない、まさに雑草一本生えない荒廃ぶりだ。
立崎の手口の執拗さがいかんなく発揮されたのはここからだ。立崎はアクティビジョンの取締役を二〇〇二年一二月に退任しているが、その後も頻繁に会社に現れ「小野寺が金を着服した」という偽情報を流している。これを信じた一部の役員と社員は立崎が取締役を務める新会社に移って残務処理を続けているが、そこでも給料や報酬は未払いのままで、立崎とも連絡が取れない状態が続いているという。
小野寺は会社の財産も信用も失ったうえ、立崎に横領の罪を着せられて現在潜伏中だ。筆者が取材したときも相当な精神的ダメージを受けている様子で、立崎から危害を加えられることをおそれて心中穏やかでないと話していた。筆者は小野寺以外の過去の被害者からも話を聞こうとしたが、その多くが小野寺と同じような仕打ちを受けたようで、ひそかに転居して行方知れずという場合がほとんどだった。
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